2005年 04月 07日
乙一『ZOO』 |
SEVEN ROOMSが素晴らしいですよ?
前々から買うって言ってたZOOをやっと読了。買ってからずいぶんと積読してたんだけど、映画化も始まったのでようやく重い腰をあげました。やっぱ、小説を先に読んでから映画観たかったので。
この小説は10個の短編で、それぞれの作品がバラバラの方向に向いてるのもあってか、区別しづらい。それぞれの作品を黒乙一度みたいなので個別に。
カザリとヨーコ:黒60%白40%
『死にぞこないの青』系統。今回もねちねちねちねち周りからいじめられちゃってます。高校生までって大体が家か学校の2つぐらいしか居場所が無いよね?その2つともから居場所が無い鬱ッぷりがはたまらんですよ?
血液を探せ!:黒?白?
なんだろう?ギャグ系なのかなー。多分、小説じゃなくてあとがきによく出る文体に近いと思う。『乙一日記』あたりのノリで書かれた小説みたいな。やっぱりギャグなのに黒いね。
あと、ストーリーとは関係ない話だけど、ボクはネットで他のサイトを見るまで名前の秘密に気付きませんでした…。変な名前だなあとは思ってたけど、どーりで。てか、気付かなかったことが恥ずかし過ぎる…。
陽だまりの詩:白100%
この短編集にして唯一の『失はれる物語』に載ってそうな話。他は限りなく暗黒系ですが。
でもいつもならボロボロ泣いてたりするけど、今回はそうはならず。って言うのもコレ読んだときは相当に頭がぐぁんぐぁんしてたので…。もっかい読みかえそ。
SO-far そ・ふぁー:黒?白?
こっちは乙一小説の奇妙さが前面に出てる作品。てか、コレについては散々騙されまして。『乙一日記』でソファーに座った男の子の話があったじゃないですか?アレを読んでから、こっちを読むと、騙される必要の無いところで勝手に騙されてしまって。乙一さんの小説は黒か白かだけじゃなくてギリギリのところまで騙されてる事に気付かないってのがあるので、『乙一日記』を読んでから読むと更においしいデスヨ?
冷たい森の白い家:黒100%
死体で家を作りましょう。なんて真っ暗なんだ。『暗黒童話』の劇中にあった暗黒童話って童話(繰り返し過ぎ)に系統が似てるのかなー。ボクは好きですが、うけつけらんないって人もいるんだろーなー。もったいね。
Closet:黒?白?
コレも暗黒系だせつない系だってのは関係ないね。『A MASKED BALL』が近いのかなー。走り出しは『夏と花火と私の死体』に近いのかなーって思ってたけど、そうはならんかったね。今回は騙されたままだった。答えを聞いて数ページ戻って驚愕。騙されたって言う点ではコレが一番良かった。もーびっくりするよ?
って、騙された騙されたと連呼してると、コレ読んだ人が騙されまいと斜に構えまくって読み進められんのはヤだなー。騙された!って強調しつつも素直に読めるような言い方ってないかなー。
まー、ボク自身にそんな影響力なんてあるはずも無いですが。
神の言葉:黒100%
後半に起こる暗黒描写はすさまじいモンがあります。コレを淡々とした語り口でやられるもんだからたまんない。
コレも頭がヤヴァイ中読み進めたのでいまいち頭に入ってない…。もっかい読まねば。
ZOO:黒100%
最初の一瞬と連続するものについての話は良かった。それがかかって、あの写真でしょ?中盤あたりまでは『GOTH』系なのかなー。そっから先はまた別物だけど。
最後の主人公の決意。これは結局果たされないまま終わるんじゃないかと思った。だって,ここまでずるずるやってんのって、キャラクターがそのまんまボクとおんなじじゃん。無理無理。ぜったい無理。
SEVEN ROOM:黒100%白30%
あわせて100超えてるじゃんって突っ込みはなしで。どっちも別パラメーターデスヨ?
コレをうどん屋でうどん(納豆オクラトロロうどん)をすすりながら読んでたんだけど、うどんどころじゃなかった。この物語のルールの非常さがあまりに悲痛で。なので、確実に暗黒系なのですが、そのどうしようもない圧倒的な暴力の前で、手を取り合う姉と弟の姿が良かった。
今回一番ゾクゾクして、読み終わった後の何かの喪失感を感じて一度本を閉じて呆けてた。ZOOの中ではコレが一番オススメ。クライマックスのお姉さんがたまらんです。
しかし、このとき食ってたねばねば系は全て細かく刻んであったので、混ぜると小説に出てきた水路の水に似てしまうのね。もう、どうしようかと…。
落ちる飛行機の中で:黒?白?
コレも軽いノリで奇妙な物語。こっちの系統は淡々とした描写って言うよりも飄々としてるって言った方がいいのかも。会話がかみ合わないし。この変な掛け合いはちょっと楽しい。
全体的に内に抱え込んでしまった感情がヘドロのように渦巻いてしまって、肥大した劣等感の度合いが違ってるぐらいで、いわゆる普通の人と少しズレた世界の話が多いのかなー。
それでも、こーゆーコンプレックスなど、主人公の内面から、主人公の視点から、第3者の視点から、更にその外側からなど色々な切り取り方で描いてる気がする。作者の視点の置き所の豊富さにびっくりするね。一方的な見方が無い。一つ一つはそれでストンと心に落ちるけど、ZOO全体で見ると方法や視点や考え方なんかで、また思考の迷路に迷ういい短編集でした。黒乙一全開!みたいな。
『落ちる飛行機の中で』を読んだのは、ZOOの映画を観に行く電車の中だったのね。ギリギリまで読んでた。なので消化しきれないまま映画館に行ったのはちょっと失敗だったかも。まー映画については後日って事で。いつだ?
by crazy-hey
| 2005-04-07 02:26
| 小説